次回企画展「虫の詩 かそけきものの声音を愛す」6月26日スタート!
虫の詩 かそけきものの声音を愛す
2022年6月26日(日)―2023年6月11日(日)
1階 展示室3
小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は虫を愛した作家でした。ファーブルの昆虫の本を愛読し、美しい竹細工の虫籠に松虫や鈴虫、草ひばりなどを飼い、その声音に耳を傾けていました。また、日本の古い詩歌をたくさん拾い集め、その詩に込められた心情や自然観、あるいは虫に対する日本人の愛着心について語るとともに、ときには進化論や仏教的、哲学的随想を交えながら日本の虫にまつわることがらを西洋の読者に紹介しています。
作品に目を向けてみると、「蜻蛉(トンボ)」「蝉(セミ)」「蠅(ハエ)」「蛍(ホタル)」「蛙(カエル)」「蚕(カイコ)」「草ひばり」「蝶(チョウ)」「蚊(カ)」「蟻(アリ)」など多くの虫や小動物などをテーマにしていることがわかります。作品はいずれも昆虫学の論考ではなく、その種類や鳴き声、和歌や俳句、虫聴きや虫売りなど文化的考察のエッセーです。八雲は虫にまつわる民俗信仰や民衆文化に関心を示し、自分自身も庶民の生活を共有するという共感的な姿勢を貫いていることがわかります。
「一寸の虫にも五分の魂」を見出す日本人の心の持ち方、虫の音を「美しいミュージック」と感じる日本人の耳と豊かな感性は、虫の愛好という点において、古代ギリシャ人と酷似していることにも気づきました。
本展では、虫や小動物が主役となる作品を糸口に、愛用の虫籠、直筆原稿、著作にみる昆虫のイラストなどの資料を中心に展示します。八雲が最も健全で幸福であるという日本人の自然に対する態度、あるがままの自然を受け入れ、虫や蛙などかそけきものの中にも「美」を見出してきた日本人の心に光をあてていきます。そのことが、困難な現代を生きる私たちに一筋の光をもたらすことを期待しています。